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凍結粉砕による細胞破砕の概念図 酵母粉砕における論文

細胞破砕の概念図

製品紹介

オートミルSKミルクールミル

1.目的

生化学や分子生物学の分野において研究対象となる細胞を壊してタンパク質や核酸、DNAやRNAを抽出して各種の解析を行うことが、日常的に行われている。現在は、ガラスビーズによる物理的破砕方法、超音波処理による破砕方法、フレンチプレスによる破砕方法あるいは液体窒素で凍結した試料を乳鉢と乳棒で破砕する方法などで細胞の破砕が行われているが、これらの方法はいずれも一長一短があり試料の処理量や調製の目的に応じて破砕方法を選択しているのが現状である。そこで、液体窒素で試料を凍結しシンプルな機構で物理的に破砕する装置を開発しその有用性を検証することとした。

2.実験方法

生物試料として今回は、出芽酵母/Saccharomyces cerevisiaeの実験室株A2-1-1Aを用いた 酵母細胞の破砕は、クールミルによって行った。これは、あらかじめ液体窒素で冷却しておいたステンレス製のチャンバーに細胞懸濁液を滴下し、さらに液体窒素を加えて試料を完全に凍結したのちクラッッシャーをセットして室温で機械的に上下に細かく振動を与えることにより細胞の破砕を行う。SDS-ポリアクリルアミド電気泳動、及び、アガロースゲル電気泳動は、常法どおり行った。

3.結果及び考察

3−1.細胞の破砕状況の確認

まず、 クールミルによる細胞の破砕状況を光学顕微鏡により確認した。約2分間処理することにより、酵母細胞の9割以上は原形をとどめていないくらい壊れていた。 /図-2

細胞破砕の処理前
細胞破砕の処理後

処理前

処理後

図-2 光学顕微鏡による細胞の破壊状況の観察

3−2.細胞内タンパク質の抽出

クールミルで処理する時の液量を200μl、500μl、1000μlとして細胞を破砕し処理した液の遠心上清について、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動を行い細胞内タンパク質が抽出されるかどうか検討すると共に、破砕する時の処理量についても検討した。図-4に示したようにクールミルで処理した後の遠心上清からはタンパク質が検出された。半定量的ではあるが、破砕する時の処理量については500μl前後が適当であると考えられた。

タンパク質の検出
図-4 SDS-PAGEによるタンパク質の検出

1:分子量マーカー
2:処理量 200μl
3:処理量 500μl
4:処理量 1000μl

3−3.細胞内の核酸の抽出

タンパク質の抽出で使用した遠心上清を常法どおり、フェノール抽出により除タンパクを行いエタノール沈殿により核酸/DNA/RNA/を回収した。この一部をRNA分解酵素で処理してRNAを除き、先ほどのサンプルと共にアガロースゲル電気泳動を行い、調製した核酸/DNA/RNA/について評価した。図-5に示したように、クールミルで調製した核酸は、アガロースゲル電気泳動で見る限り他の方法で調製したものと遜色がないくらいのものであった。また、破砕する時の処理量は、やはり500μl前後が適当であると考えられた。

細胞破砕

図-5
アガロースゲル電気泳動による核酸の検出

 

1:分子量マーカー
2:処理量 200μl
3:処理量 500μl
4:処理量 1000μl
5:分子量マーカー
6:処理量 200μl/RNase処理あり
7:処理量 500μl /RNase処理あり
8:処理量 1000μl /RNase処理あり

クールミルによる細胞破砕は、室温で簡便に行えること、液体窒素により冷却しているので、試料の劣化が少ないと考えられること、金属製のチャンバーを採用しているため器具の加熱が可能なことから特に調製時の分解が心配なRNAの抽出等に適していると考えられる。また、今回は実験を行うことができなかったが、クールミルにより調製した核酸試料を用いて、染色体DNAからのPCRや、調製したRNAを用いてRT-PCRなどが可能かどうかについても検討してみたいと考えてる

SKミルで凍結破砕実験の検証結果

イネの緑葉のRNA抽出

細胞破砕 1.イネ緑葉/約1g/をはさみで細かく切断
2.SKミルにより凍結破砕
3.CTAB法によりRNAを抽出
4.電気泳動

酵母菌の細胞破砕
1.パン酵母/S. cerevisiae/をYPD培地にて対数増殖期まで培養
2.培養液約1mlを2mlのサンプルチューブを用いて遠心集菌
3.SKミルにより凍結破砕
4.フェノール処理、エタノール沈殿により核酸の回収
5.電気泳動

細胞破砕